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2019年9月13日相続あれこれ 2019年9月号
※こちらの記事は過去に配信していたオーナー様向け情報より転記したものです。内容は2019年9月13日時点の内容となります。 <賃貸オーナーのための相続対策> 相続関連の新聞広告を良く目にします。それだけ一般の方々から相続に関心が集まっているのでしょう。それは昨年7月に40年ぶりに相続法が改正になり、今年の1月から順次施行されていることです。既にご存知の方も多いと思いますが、ここで相続法の改正の主な内容を確認することにいたします。(注釈:昨年7月は2018年7月、今年の1月は2019年1月のことになります。) 〇配偶者居住権を創立 〇自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に 〇法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に 〇被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に この他に改正された点は 〇配偶者短期居住権 〇自宅の生前贈与が特別受益の対象外になる方策 〇遺産の分割前に被相続人名義の預貯金が一部払い戻し可能に これらの項目が改正されました。この特徴は配偶者の権利が大きく保護されたことと介護、看病など実際に従事することが多い長男の嫁など法定相続人でない功労者に報いことだと思います。この背景には高齢化、核家族化にともなう社会の変化に対応する必要があったことがあげられます。 主な内容を「政府広報オンライン(HP)」から抜粋しますと (1)配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。これは、建物についての権利を「負担付きの所有権」と「配偶者居住権」に分け、遺産分割の際などに、配偶者が「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができるようにしたものです。上記のとおり、配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権とは異なり、人に売ったり、自由に貸したりすることができない分、評価額を低く抑えることができます。このため、配偶者はこれまで住んでいた自宅に住み続けながら、預貯金などの他の財産もより多く取得できるようになり、配偶者のその後の生活の安定を図ることができます。令和2年4月1日施行 (2)自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含め、全文を自書して作成する必要がありました。その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピーなど、自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになります。平成31年1月13日施行 (3)法務局で自筆証書による遺言書が保管可能に 自筆証書による遺言書は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり、捨てられてしまったり、書き換えられたりするおそれがあるなどの問題がありました。そこで、こうした問題によって相続をめぐる紛争が生じることを防止し、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、法務局で自筆証書による遺言書を保管する制度が創設されます。令和2年7月10日施行 (4)被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能に 相続人ではない親族(例えば子の配偶者など)が被相続人の介護や看病をするケースがありますが、改正前には、遺産の分配にあずかることはできず、不公平であるとの指摘がされていました。 今回の改正では、このような不公平を解消するために、相続人ではない親族も、無償で被相続人の介護や看病に貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対し、金銭の請求をすることができるようにしました。令和元年7月1日施行 これらの改正により配偶者の生活を安定することや介護に貢献した親族に報い ることにより相続時に発生しがちな不公平が解消することが期待されます。 詳しくは政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201809/1.html をご覧ください。
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2019年8月27日相続あれこれ ⑧
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年8月9日時点の内容となります。 <賃貸オーナーのための相続対策> 相続対策というと、まず節税という方がいらっしゃいますが相続対策には主に三つあります。まずは分割対策です。そして納税対策。その後が節税対策です。 なぜ分割対策が第一番目かというと相続は多数決では決まりません。遺言がなければ分割協議が必要です。現金や株式なら分割も簡単ですが不動産はそう簡単にはいきません。特に賃貸物件はなおさらです。不動産の相続登記は公正証書遺言があれば分割協議をせずに登記することはできます。しかし、それだけでは円満な相続ができるとは限りません。 相続人の人数や経済状態も考慮して分割案を作ります。遺留分のことも忘れずに対策に織り込んでください。遺産分割協議が整わず争っていると納税期限に間に合いません。 納税対策ですが、まず自分の資産がいくらなのか、実勢価格と相続税評価額とを把握しておおよその納税額をつかんでおきましょう。現金や金融商品は実勢価格と同じですが問題は不動産、土地の評価です。相続税法では適正な時価となっていますが、最初段階では路線価に面積を乗じた価格でいいと思います。路線価は国税庁のホームページで全国の路線価が閲覧できます。また、路線価の付されていない地域は倍率表がありますのでそれをもとに固定資産税評価額に指定の倍率を掛ければ評価額が算定できます。建物の評価は固定資産税評価額ですから毎年区市町村から送られてくる納税通知書(納付書)に評価額が記されています。その他、評価の難しいものには美術品や骨とう品がありますが、ここでは省略いたします。資産額がわかれば後は税金の計算です。計算方法は国税庁のホームページや信託銀行などのホームページにも出ていますので一度、挑戦してみてください。 そこで、おおよその納税額がわかればその資金をどうするかです。相続税の申告は相続発生から10か月です。その期限までに申告納税をしなければなりません。10か月というと余裕があるように感じますが、相続が発生すると通夜や葬儀、初七日、四十九日法要と忙しい日々が続きます。4か月までには被相続人の準確定申告も必要です。税金を現金や預金で賄えられる方はともかく、土地や不動産を処分換金しなければ納税できない人は大変です。土地は隣地との境界が確定していなければ測量をし、隣地所有者の承諾書がないと売れないこともあります。アパートなど賃借人がはいった物件では収益還元価格(利回りが基準)でないと売れません。人気があり地価の高い地域ほど割安になる傾向があります。 さて、納税対策にめどがついたら節税対策です。節税に熱心なあまり脱税にならないようにすることは当然ですが、残念ながら税制は簡単にしかも当局の都合で変わります。あまり国会で審議もないようです。ですから今の制度にあわせても将来の相続発生時には役に立たないこともありえます。節税対策の第一歩は資産を評価の低いものに組み替えることです。現金を土地や不動産に換えることも対策のひとつでしょう。しかし、いくら相続対策だからといっても経済合理性を無視した賃貸経営はいけません。市場性の低いところで借金をしてアパートを建てるなどは絶対に避けなければいけません。相続対策は賃貸経営が健全に行える範囲で行うことが重要です。賃貸物件を相続させたいと考えるなら余裕資金でリフォームをすることにより相続財産の現金が不動産の一部に換わります。リフォーム代金1000万円をかけても不動産評価はほとんど変わりませんから、リフォーム代金分資産を圧縮でき、その分賃貸物件の競争力もあがります。将来価値が上がるものや賃料収入のあがるものは生前贈与も有効な手段です。相続時精算課税制度もよく考慮して活用するのもよいと思います。 相続対策は十人十色です。自分にあった対策を立てるようにしたいものです。もちろん、当社でもそのお手伝いをいたしております。まずはご相談下さい。
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2019年7月12日相続あれこれ ⑦
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年7月12日時点の内容となります。 <遺言信託について> 遺言信託は、信託銀行やメガバンクで取扱っています。相続というと税金やら分割などで大変と考えている方が多くいらっしゃると思います。 日常生活にあまりなじみのないことですし、相続は被相続人の死亡という悲しいことが発生の大元ですからなるべく触れたくないと考える人がいることも事実です。そんなわからない不安なことを誰に相談するのかと見当もつかないというのは無理からぬことです。そうした中、大手銀行や信託銀行で遺言信託をすれば多少はお金がかかっても安心と思うことに不自然さはありません。 「銀行で遺言信託をしたらもう大丈夫。」これ本当でしょうか。実は私の身の回りで起きたことをお話しします。 ひとつは妻の実家の相続です。妻の父は銀行員でした。そんな関係で系列の信託銀行で遺言信託をしていましたので父の死後1ヶ月頃、信託銀行から妻に連絡がありました。遺言信託の事は父から聞いて知っていましたので、そのままお任せするつもりでいましたが、その担当者から「遺産の内容確定に時間がかかります。8月の下旬にはなんとかお知らせできますので、それまでお待ちください」とのこと。父は4月に亡くなりましたので8月下旬では3ヶ月を過ぎてしまいます。父は銀行退職後、ある機械メーカーの再建を任されていましたので、経営者保証などの可能性もあるので7月中にはすべてを明らかにして欲しいと言っても聞いてくれませんでした。色々と折衝してわかったのですが、その信託銀行の担当者は相続放棄や限定承認の期限を知らなかったのです。ですからこちらが開示を2ヶ月程度といっても、取りあってくれませんでした。止む無く上司の支店長に話して何とかこちらの要望通り開示して頂き、単純承認でいくことにしました。結果的には無事に終わりましたが、担当者、上司の課長と会って、驚くほど相続の知識がありませんでした。もちろん銀行には専門家もいるのでしょうが、郊外の支店では充分知識経験のあるスタッフがいないまま業務を請負っているのではと疑念が生じます。 つい最近もお世話になった方が亡くなり、未亡人から遺言信託により公正証書遺言を作成してあると、その副本を見せて頂きました。その方にはお子さんがなく、未亡人と兄弟3人の4人が相続人です。ご主人は生前から法定相続分通りの分割を望んでいたそうです。銀行の作成した公正証書遺言にはその通り書かれていました。全財産の一覧が記され、それを妻に3/4、兄弟に1/4としか書かれていません。遺産は不動産と銀行預金でした。誰に何をと指定なく、ただ割合のみです。これでは不動産は共有にするか、分割協議をしなければなりません。何の為の遺言かと絶句です。 日本を代表する銀行の遺言信託の一例を見てしまいました。一般の方は、銀行や信託銀行なら大丈夫と信頼をして信託するのでしょうが、一部の銀行やその支店には知識が不十分と疑わざるを得ないようなことがあります。もちろんほとんどの銀行や信託銀行には専門の知識と経験豊富なスッタフで対応されていることと思います。 現在では相続の専門家を名乗るものが多くありますが、銀行でもこんなことが起きているとどこに相談をしたらよいのか不安です。相続に携わる専門家にも国家認定制度が必要かと思ってしまいます。
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2019年6月8日相続あれこれ ⑥
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年6月8日時点の内容となります。 <自動車も相続財産> 相続税の額を計算するにあたって、すべての財産の金額を置き換えることが大事なことです。貴金属、株式、土地、建物などと同様、自動車も相続財産としてカウントします。高級車であれば財産として価値を感じることがあっても、一般的な自動車を資産として感じない方も多いのではないでしょうか。高級車でなくても自動車に必ず持ち主がいます。自動車は価格に関係なく立派な財産となり、財産ということは万が一の時には相続が起きる相続財産の一つになります。ただし、自動車は貴金属や宝石と同様に、評価のしかたは財産評価基本通達(相続税・贈与税を計算する際に対象財産の価格評価基準として国税庁が定めているもの)には明示されていません。評価の方法としては、同種で同じ程度の中古車の買取り価格を調べて参考にするか、販売業者に買い取り価格を調べる方法があります。故人の自動車は処分するか名義変更をすることになりますが、処分をする場合は共有財産になりますので、相続人が一人の場合を除いて勝手に処分することはできません。名義を誰にするか協議し、相続人の名義に書き換えたうえで処分になります。相続にともなって名義変更する場合は、運輸支局・自動車検査登録事務所での手続きになり、自動車の評価額が100万円以下は、遺産分割協議成立申立書を提出するだけの簡単な手続きでおわりますが、100万円以上であれば別な手続きになります。併せて必要書類として、相続人が一人のときは査定価格がわかる査定書・故人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)・相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)・相続人の実印・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)・車検証・車庫証明書などが必要になります。相続人が複数の場合でも、名義変更に必要な書類は一人のときとそれほど変わりません。100万円以下であれば一人の相続での名義変更は可能ですが、後々のトラブルを避けるために相続人全員の承諾をとりつけておくことが必要でしょう。トラブルになれば自動車の価格に関係なく訴えられることになりかねません。さらに故人が使用者であっても、所有者が自動車販売店の場合、残債がなければ、販売会社は遺産分割に関与する必要がないため、名義変更に必要な書類を発行してくれます。その際に死亡除票や戸籍謄本などの死亡を証明する書類や相続人であることの証明書類が必要になります。また、名義変更せずそのまま遺族が乗っているケースでは、時間の経過によって取得できた書類が取得できず、面倒なことになりかねません。 自動車は相続財産のひとつであることをお忘れなく。
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2019年5月10日相続あれこれ ⑤
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年5月10日時点の内容となります。 <賃貸オーナーのための相続対策> 高齢化社会といわれて久しい日本ですが、寿命は世界最高レベルを誇りながらも健康寿命となりますとちょっと心配な状況です。認知症患者数も増える傾向にあり、こうした患者の権利を擁護するために2000年4月の民法改正により従来の禁治産制度にかわり成年後見制度が施行されました。この制度が発足したことにより認知症患者等の意思能力を喪失した人(被成年後見人)の権利や財産を守ることが出来るようになりました。 制度が始まった頃は後見人には配偶者や子供や親族が選任されることが多かったのですが、後見人が被後見人の財産を流用するなどの背任行為が続出することがありました。その為、一定の財産を所有する被後見人の場合、申し立てた家族が後見人に選任されることが難しくなり、弁護士や司法書士といった専門家が家庭裁判所から後見人に指定されることが一般的になりました。こうした職業後見人が選任されると当然費用が掛かりますし、家族は被後見人の財産に触れることもできません。この状態は被後見人が亡くなるまで続きます。また、申し立てには時間も費用も掛かりますので中々使いづらい制度でもありました。そのうえ、弁護士などの職業後見人の中にも背任行為が出るようなこともあり制度への信頼を毀損するようなことにもなりました。 弁護士や司法書士といった法律の専門家といえ見ず知らずの他人に後見人になってもらうのに抵抗がある人がいても無理からぬことです。そこで健康なうちに信頼できる人に後見を託す制度が任意後見制度です。これは家族や知人など身近な人を後見が必要になった時に後見人となって活動してもらう契約行為で公正証書によってのみ有効になり成年後見登記をすることで有効となります。これをすることにで、認知症が進み、法律行為が出来なくなった時に速やかに後見人が家庭裁判所に申立てすることで選任を受けることができます。当社でも不動産を所有する方で将来が心配という方にはこの任意後見を勧めることもありました。法務省の統計でも任意後見の登記件数は平成20年の7,095件から同25年には9,219件、同29年には12,045件と増えています。こうして世の中にも任意後見制度が認知されていますが、最近は法定後見でも家族、親族が後見人に選任される傾向のようで、家庭裁判所の判断も資産が多いからすぐに職業後見人を選任するのではなく、被後見人との関係等を考慮しているようです。ただし、親族後見人の場合は後見監督人が指定されることが多く、費用が掛かることは避けられません。 後見制度が使いたくないという方には民事信託(家族信託)を選ぶということも方法のひとつです。いずれにしても高齢化社会の中で高齢者の財産を守ることは早目の対策が重要です。
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2019年4月27日相続あれこれ ④
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年4月13日時点の内容となります。 <賃貸オーナーのための相続対策> 平成26年に相続税の改正案が公表されました。相続税の基礎控除が5,000万円から3,000万円に、一人当りの控除額が1,000万円から600万円となりました。 これが発表されるとアパート建設が飛躍的に増えました。相続税対策のためです。大手ハウスメーカーやアパート専業建設会社など建築会社は千載一遇のチャンスと受注活動に奔走しました。この結果、新築着工数は平成26年の約89万2千戸から平成28年は約96万7千戸の新築が着工され、2年間に約75,000戸の増加をみました。こうして供給が増えたことにより神奈川県内の木造アパートの空室率は2014年の約29%から、約39%に跳ね上がりました。 相続税対策には借金が効果あると言われています。本当にそうでしょうか。1億円借金してもそのお金を持ったままでは1億円の借入と1億円の現金ではプラスマイナス0で、変化なしです。そうです。借金しただけでは相続税対策にはなりません。ところが1億円借金をして1億円のアパートを建築すると1億円のアパートは固定資産税評価ではおおよそ6,000万円程度でしょう。そこで相続税評価が4,000万円程度減らすことができ、さらにアパートの用地はおおよそ20%程度減額されます。仮に土地の評価が1億円だとしますと何もしないと1億円の土地は1億円のままですが、前述のように1億円借金をしてアパートを建設すると土地評価約8,000万円、アパート評価額約6,000万円で土地建物評価は1,4000万円です。ここから借金1億円が引かれて相続税評価額は4,000万円となり何もしないときより6,000万円も評価額が下がるのです。 このようにアパート建設は相続税対策としては魅力的です。しかし、賃貸経営には様々なリスクがあります。第一が空室リスクです。日本の住宅戸数は昭和50年代末に世帯数を超え、数のうえでは住宅は足りているのです。そして人口は減少で、世帯数の増加も頭打ちですが、住宅供給数は増加しています。第二のリスクは災害です。平成の30年間に東日本大震災はじめ大地震や水害は多発しました。第三には地域の環境の変化です。その一例が郊外に進出した大学を目当てに学生向きのアパート建設をしたが、償却も借金返済も終わらないうちにその大学が移転し、一気に空室が増えてしまったことです。こうなると当然地価も下落してしまいます。 さらにアパートを売却する時の評価ですが、今では収益物件の評価は収益還元となるのが一般的です。そのアパートの賃料が1,000万円(年間)なら期待利回りが10%だとすると売却価格は1億円です。もし、土地評価額1億円で建築費が1億円なら2億円の物が半値でしか売れないことになります。 さて、前置きが長くなりました。賃貸オーナーの相続対策ですが、相続対策には主に三つ、まずは分割対策、そして納税対策、最後が節税対策です。相続人が一人でしたら分割対策は不要です。相続財産が控除額以下なら納税対策も不要です。しかし、賃貸オーナー様でしたら基礎控除で収まる方はいらっしゃらないでしょう。そこで分割対策を最初に考えましょう。アパートなど不動産は分割が難しいものが多いですし、価値の異なるものがほとんどです。複数の相続人に公平感のある分割を考えるのは簡単ではありません。次に納税対策です。納税のためにアパートなどの賃貸物件を売却せざるを得ないようですと評価は下がったけれど、売却価格が収益還元評価で取得価格からみて大きく目減りすることになりかねません。アパート建設はこのことを考慮しなければなりません。節税対策でのアパート建設は借入が大きな効果を生みますが時間が経過し返済が進みますと差し引ける借入金が減ってきます。ですから慎重に行いたいものです。相続税対策としては相続財産から評価を下げる、現金を他のものに変えることになりますから、大規模修繕などは相続発生前に行う事は節税と賃貸経営の健全化と一石二鳥の効果があります。また、賃料収入の安定した物件であれば相続時精算制度を使って贈与をすることも考えられます。 借金や相続対策でのアパート建設は賃貸経営を考えて慎重に行う事が重要です。建設会社や住宅メーカーの勧めに簡単にのっては禍根を残すことになります。
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2019年3月3日相続あれこれ ③
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年3月3日時点の内容となります。 <相続相談の現場から> 子供の無い妻からの相談。子供の無い夫婦でご主人が突然亡くなられました。普段から健康に自信のあったご主人は遺言はもちろん自分が亡くなることなど露ほども考えていませんでした。ところが70を前に突然亡くなられました。 相続人は奥様とご主人の兄弟3人です。主な財産は自宅の土地と建物。その他に退職金の残りの定期預金が1500万円、長年勤めた上場企業の株が2万株、亡くなった日の終値で550万円でした。自宅土地は150平米で路線価は16万円/平米ですから2400万円、建物は築35年で190万円です。相続財産は4640万円です。 法定相続人が4人ですから基礎控除は5400万円ですから相続税の心配はありませんでした。 ご相談見えた奥様(未亡人)に「税金の心配は大丈夫ですね」とお話しすると、ちょっと安心された様子でした。しかし、次の一言で私は考えてしまいました。それはご主人のものだと思っていた自宅土地が亡くなったご主人のお父様の名義のまま15年の相続登記がなされていませんでした。奥様はご主人から「親父の相続はすべて片が付いている。弟たちには当時現金が渡され自分がこの土地を相続したから弟たちからは文句は出ない」と聞かされていたそうです。 しかし、3人の弟さんたちの主張は違っていました。「親父が亡くなった時、兄貴が税金もかからないから相続は手続きも無くても大丈夫。お前たちには親父の定期預金から一人に100万円やるから文句を言うなとは言われたが納得した訳ではない。」とのことです。 さて困りました。「全財産を妻に相続させる」の遺言があれば定期預金と株式はすべて奥様のものです。兄弟姉妹には遺留分がないからです。しかし、このケースでは残念ながら遺言がありませんからご主人の財産も4分の1は弟たちに相続権がありますし、自宅土地はお父様の相続をしなければなりませんから4人兄弟で4分の1ずつになりますが奥様の取り分は4分の1になりません。相続人が配偶者と兄弟ですから配偶者4分の3、兄弟4分の1となり、土地の4分の1のうちの奥様の分はその4分の3です。これで話し合い(遺産分割協議)が出来なければ法定相続割合でやるしかありません。 自宅土地2400万円は売却して金銭分割することになるでしょう。遺言で全財産を妻になら奥様は600万円から150万円が弟3人に渡さなければなりません。従って、土地の取り分は妻450万円、弟Aは650万円、弟B650万円、弟C650万円。自宅建物と金融財産は妻1680万円、弟Aは560万円、弟B560万円、弟C560万円となります。土地と併せると妻2130万円、弟Aは1210万円、弟B1210万円、弟C1210万円になります。これを実現させるには妻の住む自宅を売却しなければできないという悲劇が待っています。2020年4月以降でしたら民法改正の配偶者居住権で妻の居住(生活)は大幅に保護されますが現行では4人の話し合いで弟たちが温情ある理解を兄嫁にしてくれなければ妻は夫を亡くした悲しみのうえ住まいまで失くしてしまうことになります。 自分は健康に自信があるだけでは本当の愛情を示すことは出来ません。民法を理解して冷静に現実的な対応をすることが必要です。 ご相談に見えた未亡人の話し合いが円満に出来ることを祈っています。
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2019年2月1日相続あれこれ ②
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年2月1日時点の内容となります。 「平成31年度税制改正」によって相続税がどう変わるのかを見てみたいと思います。今、日本は少子高齢化社会で世界一の長寿国家となりました。長寿は大変良いことです。しかし、その分社会保障に係る費用は増大し、国の財政を逼迫させています。平成のバブル崩壊後増え続けている財政赤字は一向に減りません。こうしたことから増税は止むを得ないという雰囲気の中、税制改正が行われています。改正という言葉からはより正しいことを行うようなイメージですが、こと税制においては増税と同じことです。 社会保障費を確保するためにという名目でこの10月から消費税が8%から10%に引き上げられる予定です。消費税は大衆課税で弱者に厳しい税金といわれていますが、多くの批判があっても増税は断行されるのでしょう。一方、相続税は富裕層への課税であり富の再配分は社会的に必要と思われているせいか、増税にも社会的な反対が起きにくい税金です。そのため国会でも野党も十分な議論をしようともしていません。モリカケ問題などよりも優先順位は低いのでしょう。 前置きが長くなりました。平成30年12月21日 閣議決定された平成31年度税制改正の大綱の中で相続に関する項目は次の通りです。 〇個人事業者の事業承継税制の創設等〇特定事業用地等に係る小規模宅地等の特例の見直し〇非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の要件緩和〇教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し〇民法における成年年齢引下げに伴う年齢要件の見直し〇配偶者居住権に関する税務上の取り扱い〇特別寄与料に関する税務上の取り扱い これらの中で賃貸オーナーにとって特に影響があるとおもわれるのが「特定事業用宅地等に係る小規模宅地等特例見直し」だと思います。 小規模宅地等特例の減額割合は下表の通りです 表の中で「貸付事業用の宅地等」の範囲が見直しとなります。 改正案は相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等については、特例の対象から除外となります(但し、当該宅地等のうえで事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く)となっています。 適用時期は平成31年4月1日以後に相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について適用される。但し、平成31年3月31日以前から事業の用に供されている宅地等については適用されない。 新規で事業を開始した後3年間は減価償却資産の価額が宅地等の相続時の価額の15%以上であるか否かに注意する必要があります。 この改正の理由は平成27年の相続税改正により控除額が5000万円から3000万円に一人当たり1000万円が600万円に引き下げられ増税になったことにより、賃貸アパートを建築し、貸付事業用の宅地として小規模宅地等の特例による節税が急増したことによるものと推測しています。 このように相続税の増税傾向は止まりません。相続対策は早目におこなうことが重要になります。
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2019年1月4日相続あれこれ ①
※こちらの記事はリニューアル前の「小浜土地建物公式ホームページ」内より転記したものです。内容は2019年1月4日時点の内容となります。 明けましておめでとうございます。皆様には良い年をお迎えのこととお慶び申し上げます。 年々、お正月らしさが失われている今日この頃ですが、お正月と言えばお年玉この風習だけは廃れそうにありません。大げさに言えばお年玉も贈与の一部といえます。 有効な相続対策のひとつに生前贈与があります。贈与した資産は貰った人のものですから相続財産からは除外されますので、相続が発生したときに財産額が贈与した分だけ減るので節税効果があるのです。そんな簡単な原理ですから、誰でも簡単にできます。しかし、税務署はそんなに甘くはありません。その証拠に贈与税は税金の中でも一番高い税金であることは誰でも知っている事です。 贈与を相続対策の観点から考えてみることにしましょう。まず、相続税の節税になるからと言っても、贈与税には相続発生時(死亡した日)から3年以内の贈与は無かったものとして相続財産に差し戻します。ですから贈与してから3年以上は生存しないと相続税の対策にはなりません(法定相続人が対象、それ以外は相続税の対象者でないのでOK)。 贈与することはいいけど、あげたお金をつまらないことに使っては困るとか、若いうちに多額の現金を持たせると道を誤るなどの心配から、子や孫にお金は銀行預金のかたちで贈与したけれど、通帳や印鑑・銀行カードは自分が持ったまま、これでは贈与になりません。相続税調査でも一番問題視されるのが、子や孫の名義の預金、名義預金です。あげた以上は通帳も印鑑もキャッシュカードも本人に渡さなければ贈与になりません。 贈与はあげるという意志とそれを貰いますという意志があれば、成立します。もちろん契約書は不要ですが、相続が課税の対象になる資産家は契約書を作成し贈与があったことを証明できるようにしておくことが重要です。贈与契約書のひな形はインターネットで簡単に入手できます。契約書よりもっと証拠になるのは贈与税の納税です。贈与税は毎年(暦年)110万円までなら非課税です。ですから200万円贈与すると90万円が課税対象になり税率が10%ですから9万円で191万円を子供たちに贈与でき、税務署にその記録が残ります。 高齢者から若い世代への資産の移動は国策です。贈与税には相続時精算課税制度や教育贈与の特例など若い消費世代に贈与を推進させようといろいろな特例が整備されています。 お年玉袋を渡されたついでに贈与のことも考えてみましょう。

