相続あれこれ 2023年2月号

※こちらの記事は過去に配信していたオーナー様向け情報より転記したものです。内容は2023年2月15日時点の内容となります。

推定相続人に対する生前贈与は、相続財産から除外できるか?

今回は生前贈与について考えていきたいと思います。

生前贈与は相続税対策としては効果的な面がある一方、法的には、一定の例外事由がある場合を除き、その分を「持ち戻し」した総額を相続財産とみなして計算します。今回は、3人の子のうちの1人に生前贈与を検討されているお客さまからのお問合せを基に、生前贈与と遺産分割の考え方を見ていきましょう。

Q.私は3年前に妻を亡くし、将来の私の相続について考えています。私には3人の子があり、私の財産は自宅の土地建物と2つのアパート用の土地建物の合計3つ(3つともほぼ等価の土地建物)と、預貯金が5,000万円ほどあります。この度、私の預貯金を解約して5,000万円を長男に事業資金として生前贈与する予定です。私の死亡時には預貯金は無くなり、上記3つの土地建物だけが残りますが、3人の子は、それぞれこの3つの土地建物を3分の1の割合で相続すると考えてよいのでしょうか。

A.被相続人が、不動産と預貯金を所有している場合に、預貯金を相続人の一部の者に生前贈与すれば、相続開始時に存在する財産は残された不動産のみとなります。遺産分割協議では、相続開始時に存在する財産を遺産として分割するのが基本ではありますが、もし、生前贈与がなされていなければ、5,000万円の預金も相続財産として3人の子らに分割されていたはずです。それにもかかわらず、生前贈与は過去の問題だからといって、これを無視して分割協議をおこなわなければならないとすると、そして3つの土地建物がほぼ等価であるとすると、3人の子のうち、長男を除いた2人の子はそれぞれ1つの不動産を取得するのに対し、長男は1つの土地建物に加えて5,000万円も取得できたことになります。

 そこで、民法では、このような相続人に対する生前贈与のうち、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与」(民法904条)を、被相続人から受けた相続人がある場合には、「被相続人が相続開始の時において有した財産(3つの土地建物)の価額にその贈与の額(5,000万円)を加えたものを相続財産とみなし、前3条の規定(相続人の相続分に関する規定)により算定した相続分の中からその贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」(民法904条1項)と定めています。

つまり、生前贈与をすれば、贈与財産は、(3年以内に贈与されたみなし相続財産となる場合を除いて)相続税の対象からは離脱しますが、遺産分割協議をするうえでは、生前贈与した財産(5,000万円)は相続財産に持ち戻されて、具体的な各自の相続分が算定されることになるのです。長男の事業資金のための贈与は「生計の資本としての贈与」に該当することになりますので、これを相続財産に持ち戻し、3つの土地建物と5,000万円を加えたものを相続財産とみなして、これを3人の子が3分の1ずつ分けるということになります。従って、生前贈与は相続税対策にはなり得ますが、遺産分割対策とは必ずしもなり得ないということに注意する必要があります。